近年、AIの急速な進化によって、開発者コミュニティではある疑問が繰り返し語られています。
「AIがコードを書く時代に、開発者は今後も必要とされるのだろうか?」
もちろん、ServiceNow開発者も例外ではありません。ChatGPT、Claude、CursorといったAIコーディングツールの登場により、単純なスクリプト作成は以前よりはるかに簡単になりました。では、ServiceNow開発者という職業の将来はどうなるのでしょうか。
私の考えは比較的明確です。少なくとも今後10年程度は、ServiceNow開発者の需要は引き続き高い状態が続くでしょう。ただし、その理由は多くの人が想像しているものとは少し異なります。
AI はコードを書けても、業務を理解することはできない
AIはコードを書くことに非常に優れています。以前であれば、開発者はGlideRecordの構文を調べたり、Business Ruleの実装例を探したり、Script Includeの設計を自分で考えたりする必要がありました。今ではAIに質問すれば、数秒でコードのたたき台を作成してくれます。
しかし、実際のServiceNowプロジェクトで難しいのはコードを書くことではありません。本当に難しいのは、次のような問いに答えることです。
- この会社の Change Management プロセスはどのように運用されているのか
- どの承認ステップを省略できるのか
- CMDB にどのようなデータを登録すべきか
- 既存システムとはどのように連携するべきか
- セキュリティやコンプライアンスの要件は何か
これらは単なるプログラミングの問題ではなく、ビジネス上の課題です。AIはコードを生成できますが、組織の業務フローや関係者の要望を深く理解し、最適な判断を下すことまではできません。
ServiceNow 開発者は「プラットフォームの専門家」へと進化する
ServiceNow開発者を単なるJavaScript開発者だと考える人もいます。しかし、経験を積むにつれて、その役割は大きく変化していきます。
ジュニアレベルでは、以下のような作業が中心です。
- Client Script の作成
- Business Rule の実装
- UI Policy の設定
一方でシニアになると、以下の業務の比重が高くなります。
- プラットフォーム全体のアーキテクチャ設計
- モジュール間の依存関係管理
- システム連携戦略の策定
- セキュリティやガバナンスの検討
つまり、キャリアが進むほど「開発者」というよりも、「プラットフォームコンサルタント」に近い存在になっていくのです。そして、このような役割はAIによる代替が容易ではありません。
ServiceNow は単なる開発プラットフォームではない
ServiceNowは単なるWebアプリケーション開発ツールではなく、企業の重要な業務プロセスを支えるエンタープライズプラットフォームです。
- IT Service Management(ITSM)
- HR Service Delivery
- Customer Service Management(CSM)
- Asset Management
- Security Operations
- Governance, Risk and Compliance(GRC)
など、幅広い領域で活用されています。企業にとってServiceNowは重要な基幹システムの一つです。ERPに専門家が必要であるのと同様に、ServiceNowを理解し運用できる人材も今後も必要とされ続けるでしょう。AIがどれだけ進化しても、企業はプラットフォームを設計・運用・改善できる人材を求め続けます。
むしろ AI によって生産性は向上する
興味深いことに、AIはServiceNow開発者の脅威というよりも、生産性向上の強力な味方になる可能性があります。
以前は、以下のような作業に何時間もかかることがありました。
- API連携のサンプル調査
- GlideAjax の実装
- スクリプトのデバッグ
今ではAIがコードのたたき台を作成し、エラー分析までサポートしてくれます。その結果、開発者は単純な作業に費やしていた時間を減らし、より価値の高い問題解決に集中できるようになります。今後競争力を持つServiceNow開発者とは、AIを効果的に活用できる人、業務プロセスを深く理解できる人、そしてプラットフォーム全体を設計できる人になるでしょう。
本当に警戒すべきなのは AI ではなく「成長の停滞」
多くの人はAIを心配しますが、実際にはより大きなリスクは別のところにあります。何年もGlideRecordだけを書き続ける、Business Ruleだけを実装する、といった同じような作業を繰り返す状態に留まってしまうことです。
そのような状況では、AIの有無に関係なく市場価値は下がってしまいます。一方で、以下の分野へ知識を広げていけば、活躍できる領域は今後も増えていくでしょう。
- Integration Hub
- Flow Designer
- Employee Center
- AI Agent
- Generative AI 機能
- プラットフォームアーキテクチャ
まとめ
AIは確かにServiceNow開発者の働き方を変えつつあります。しかし現時点では、開発者を不要にしているというよりも、むしろより高い生産性を実現するためのツールになっています。企業が求めているのは、業務プロセスを理解でき、プラットフォームを設計でき、ステークホルダーと円滑にコミュニケーションできる人です。
単にコードを書けるだけでは差別化が難しくなるかもしれません。しかし、ビジネスとテクノロジーをつなぐことができるServiceNow開発者であれば、AI時代においても十分に高い価値を発揮し続けるでしょう。もしかすると将来のServiceNow開発者は、単なる「プログラマー」ではなく、「AIを活用しながら企業の業務プロセスを設計・改善するプラットフォームの専門家」として活躍する存在になるのかもしれません。